神奈川生存権裁判傍聴間に合わず
生存権裁判とは生存権保障を謳う憲法25条にちなんで付けられた名称です。 戦後、これまでに現行生活保護法の下での生活保護に関する訴訟は数多く提起され、最近でも原告側が勝訴した事件も多くあり生活保護行政の運用に影響を与えるなどの成果をあげてきました。
神奈川県でもずっと闘われています。原告の方の生活実態を語る陳述を膨張させていただくこともあります。現行の保護費ではまったくもって健康で文化的な生活を送れているとは思えません。下着がぺろぺろになっても買い換えられない。唯一の文化的な趣味である俳句の会にも保護費削減で通えなくなった…
このコロナ危機の下でも生活保護基準を10月から引き下げるというあまりにも冷酷な国の姿勢に怒りでいっぱいです。
コロナ関連解雇がとても6万人ではとどまらない状況下です。よく誤解されるのですが働きながら生活保護を利用している方はたくさんいらっしゃいます。今の社会状況では、期待した収入が落ちてしまっている、マスクや消毒液を買うために余計な出費が増えている、家計を支える世帯を分けた子どもからの支援が届かないなど、目に見えてこない苦難がおそいかかっているでしょう。
10月5日にも裁判期日のお知らせいただいていました。団会議の合間に横浜地裁前に行ったときにはもう閉廷して神奈川県生活と健康を守る会の皆さんがお帰りになるところでした。井上啓弁護士はこの日更新弁論を行ったといっておられました。裁判官の交代があっておこなわれたものだということです。裁判で争うとはいろいろな困難を伴うものだと思います。
井上弁護士にいただいた
第54号生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件 準備書面によりますと、生活保護基準を定める行政裁量について。難しい法律用語が並んでいるので、分かりやすい部分をピックアップしてお伝えします。
1.生活保護基準を定める行政裁量について
国民年金法では、年金給付額が「物価変動率」によってスライドすることが明示されているのに対して、生活保護法では「物価変動率」によって保護基準が変動することは全く規定されていない。憲法25条の生存権を保障する生活保護制度においては、保護の要否ないし水準は、時間を置かずに決定されなければならないため「物価変動」は考慮されないのである。
2.本件についての「論証過程審査」の審査事項
こ子に書かれていることは、難しい言葉ながらもなるほどねーって思えるのですが、省略します。
3.結論
本県生活保護基準の引き下げについての判断過程審査特に「論証過程審査」にあたっては生活保護費の一部手当である老齢加算廃止最高裁判決の判断枠組みと比べてより厳格かつ慎重な判断をすべきであり、その審査において「他事考慮」「考慮遺脱」「過剰考慮」そして「過小考慮」をそれぞれ検討すると、本件引下げが憲法25条・生活保護法8条に違反して無効であって、取り消すべきことが明らかとなるのである。
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上の結論に並んでいる「 」の一つ一つは、詳細な説明があるのですが、ざっくりいうと、要らないことを考慮にいれたり、(物価変動)考慮すべきこと(要保護者の個別事情)を抜いたり、過剰に考慮したり(物価下落率)足りなかったり(影響予測)しているので、取り消すべきだということですね。
保護費引下げの結論ありき。苦しんでいる人を苦しめるな!!