シンポジウム「高校改革」を問う
県議会では高校改革の見直しを求めるタイプの請願が私以外の反対で不採択になったところです。26日は横浜市内で高校改革問題でシンポジウムが行われました。主催は神奈川の教育政策を考える会です。
元高校の先生から改革の中身の説明。中学校の先生、特別支援学校の先生、保護者の方、それぞれの立場からの報告と質疑意見交流、教育学の大学教授からの助言がありました。
サブタイトルが「“経費削減ありき”で20~30校削減 指定校という名で全高校を色分け」というもの。
県に寄せられたパブコメの中で「減らすなら偏差値の低いところを」という高校生からの意見があったことが紹介されました。暗澹たる気持ちになります。
高校を減らして、入学枠が狭まる問題点よりも、多様化の名で生徒がしばられていく点の方に話題が集中しました。そもそも県が3つの柱としているのが〇ダイバーシティ(個の違いの受容)尊重の質の高い教育〇再編・統合〇学校経営力の向上とされています。この聞き慣れないダイバーシティは主に企業で用いられる語で、「人材の多様化」を指すものではないかと。教育の目標は人格の完成であるはず。企業ニーズに沿った人材を育てることではない。という指摘がありました。
(2年前神奈川の教育を考える調査会を傍聴していた時に「全日制高校進学率が低いなら、高校に無理に行かなくても、中学を出てあとは企業で教育すればいい」という趣旨のことを財界枠の委員が発言し、保護者枠の委員から「教育の目的は企業に役立つだけはない」と指摘されていたことを思い出します。あの調査会の最終まとめは、それまでの議論の正確な反映とはとても言い難い内容でした。)
先日の委員会の答弁でも驚いていたのですが、これら多様な学校のタイプはなんと教育委員会からの指定なんだとか。(学力向上進学重点校のみ立候補制)スチューデントファーストというのに、スチューデントに一番近い学校の意向を無視して、学校の類型を決めるとは…私は内心、教育委員会の事務方もおおかた学校現場を経てきたひとたちなのにトップダウンの決め方がどんなに学校現場を混乱させるか知っているはずなのにと思っていました。例えば逆さま歴史教育。社会科の先生にまるで違う授業をさせるのにこれも研究校を指定します。知事の公約ですが、日本会議の推すところでもあります。これらについては教育課程編成権を損なっているのではないかと指摘がありました。
学力向上進学重点校の指標の中に〇生徒の7割以上が在学期間中に英検2級程度以上のレベルを達成することや、〇探究活動や全国規模の大会等で成果。〇難関大学への現役進学で高い実績…などきめられており、このエントリーも3年ごとに変わるのだとか。こういう競争を激化させるしくみから、以下のようは弊害が出ています。
また、中学や高校の先生たちからは、有無を言わさず英検3級に申し込みをさせられる実態や、各教室に高校の偏差値のランキングが貼り出されていること、高校では数学がわからないから数学の補習に出たいと申し出た子がわかる子のために補習をやるんだからわからない子は来るなと言われた話。専門学校に行きたいのに大学を受けるよう執拗に勧められた話、すでに私立が決まっているのにもっと難しい大学を勧められた話。新幹線代を払うから受けてくれとまで言われた保護者の話もありました。
落ちる子をつくりだすための奇妙な受験問題があり、塾依存が増している話…大人の「成果」のために子どもたちが学びたい心が委縮させられている構図が見えてきます。
本来学校のタイプは教師と生徒が一緒になって築き上げていくもの。そして、この秋から冬にかけて成績のいい子もよくない子も非常にナーバスになっている時期に、進学は権利なんだよと声をかけてあげるという先生の言葉を嘘にさせてはならないと思いました。
また、特別支援学校の先生から語られたことは、100人のうち7人が障がい者。そのうち教育を受けているのは1人に過ぎない。その1%の子たちが通う特別支援学校が満杯。子どもたちが放っておかれている。障害者差別解消法にいう合理的配慮に欠ける状況だ。インクルーシブ教育の向かう先が不透明。経費削減ありきでないように。
また、通信制の高校では5分遅れても学校に入れない、教科書をもっていなければ入れないという不登校支援の先生からの声。
毎年千人近くが中退する通信制を心配していましたが、まさか…厳罰主義が何を生むのか…切り捨てるための方策と思われても仕方がないのではないか。ここも真偽を確認し、改善を求めて行かなければと思いました。
子どもたちと触れ合う最前線の方々のお話は大変興味深いものでした。
教育委員会を形骸化し、安倍教育再実行会議案の実現にひた走る神奈川、全国の悪しき前例にならぬようスチューデントファースト、本当の意味での子ども第一を目指します。
コメント
なんともコメントに詰まります。
私が社労士だから言うわけではありませんが今回のブログに接し教育現場と労働現場の類似性を感じました。私は教育は門外漢ですが。当事者(生徒、労働者)に対する人権いや人格無視の理由無き行政主導。大山さんのブログ中のある識者の「教育の目的は企業に役立つだけではない」はまさに正論です。
今の教育ではアルバイトや新卒で「ブラック企業」の犠牲者になる(おかしいとの主張(反論)も出来ない)のは残念ながら必然のようです。私は「教育問題」と「労働問題」は表裏一体の関係だと考えます。変えなくてはと思います。
年末になり労働弁護団やら厚労省で(各々ですが)がワークルールの法制化とブラックバイト撲滅の業界団体への指導(お願い)を行う等の動きもありました。
また三重県では「教育特区」で営利企業が学校設立して不正をはたらいたらしいとの「赤旗」(12/28付け)の報道に接し安倍政権べったりの黒岩知事が神奈川県を「教育特区」にする危険性を感じます。仮説ですがこの流れの実現化阻止するためにも来年以降も大山さんを応援する所存です。
鈴木さん
そういったとらえは本当に必要だと思います。
今年も一年、たくさんの示唆を与えていただきました。
来年もよろしくお願いいたします。