差別シフト?朝鮮学校補助金問題 大山からのラブレター
神奈川県には素晴らしい多文化共生の歴史が息づいていました。
「民際外交」をかかげた長洲知事は国と国以前に民間で交流することの意義を説き実践されました。
詳しくは神奈川県立公文書館のこのリンクをご覧ください。
故長洲知事が今の県政をご覧になったら心臓が凍るようなことが起こっています。
国において、2010年に制度が施行された高校無償化の対象から朝鮮学校を除外していることには国連の子どもの権利委員会から勧告を受けており、そんな国の姿勢から防波堤となって子どもたちを守るのは地方自治体の役割です。
県も経常費補助を行ってきましたが、ミサイル発射と核実験を理由に2013年当初予算で6300万円を計上しないこととし、その年の12月の県議会にすべての外国人学校への経常費補助の廃止を打ち出しました。しかしそのあと「子どもたちに罪はない」と知事の方針が示され、学校への経営支援から子どもたちへの学費補助へと切り替わりました。が!2016年からは拉致問題を書いた教科書を作ることを条件にこの学費補助も凍結されています。背景には議会での追及があったようです。
《経緯》私たちは本会議で3回、今年3月の予算委員会でも補助の復活を求めています。前回本会議では私は、神奈川県弁護士会が人種差別を助長しかねないと警告を行ったことを挙げて追及しましたが、知事は「(補助は)県民の理解を得られない」というのが常套句で補助再開を否定しました。子どもの学習権を理解しない県民が周りにいるなら知事は人権尊重の観点から県民に理解を図るべきです。
《顕在化した問題》3月の予算委員会では、私の問題意識は別な観点でした。
●人権に関する有識者会議である「人権政策推進懇話会」が2019年5月に開催されましたが、その傍聴をした際、10人の委員のうち実に6人までもが朝鮮学校補助金不支給問題を問題視する発言をされました。そして委員からは、議員が複数で傍聴している(共産党議員団から3人傍聴していました)ことを心強く感じる旨の発言もありました。そのことがなぜ心強かったのかわかることになります。委員の声がどこまで反映されているかと懸念する発言もあったのです。
●ところが予算委員会前の勉強会の中でこの懇話会を所管する人権男女共同参画課から、知事には一切この会議の中身が報告されていなかったことが分かったのです。伝えなかった理由としては、①人権男女共同参画課は補助金支給の所管ではないから所管の私学振興課には伝えた。➁テーマがヘイスピーチだったから。③外部の審議会などから10まで知事に報告するものではないからと。④当の私学振興課からも知事に伝えていないことがわかりました。
《私の意見》
①はこの時人権課題だから人権男女共同参画課が知事に伝えるべきだったと主張しました。懇話会の委員の方々も人権を所管するんだから県庁内から声があげられるようであってほしいという旨の発言も議事録にありました。➁はそれこそ、そのテーマでなぜ朝鮮学校問題がでてくるかを考えるべきです。③はもちろんわかっていますが、委員の半数が問題視していることを伝えないことは恣意的だと思われても仕方がありません。④も問題です。
県庁のガバナンスが問題だと、答弁の基調を事前にだいたいをきいて質問に臨みました。持ち時間7分。2つの常任委員会をまたぐというルールがあるので川崎のヘイトスピーチの過剰警備問題を県警に質問した後に取り上げました。
《予算委員会当日起こったこと》
が、その場で知事に伝えたか聞くと
「知事に報告しました」
事前のやり取りと全く違う答弁。時に当局側がこういう手法を使うことがありますし、それに対応できるよう準備はしています。ガバナンス問題はわきに置いて、
当事者が経済的問題もさることながら、「ほかの外国人学校にはない条件をつけられていることに精神的苦痛を感じる」との声を紹介し、知事は差別の定義を知っているか。加害の側に意識がなくても被害者が精神的苦痛を感じたらそれは差別。行政が差別を行っていると思われたらそれは問題だ。子どもの学習権を保障するためにも補助金の再開と求めました。
自民党席からは「拉致問題どうすんだー!」と野次。野次は中継に残りませんから残念です。
最後、たった7分半の質問時間で時間切れとなりましたが、野次に応えて「子どもたちには拉致問題を解決する権限も責任もありません!」といったものの。
《事後に》
他県の共産党議員団では、一切、当局に手の内を見せないという手法も聞きますが、県民のための善政を実現するためには、当局にこちらの主張もわかっていただき、どうしたら前に進めるか真摯に打ち合わせて着地点を見出す努力も必要です。ですから事前の交渉の方が当日よりはるかに重要だと私は考えています。ですから事実を曲げた答弁は背信行為でもあり、一定の信頼関係の上になりたつ質問をだいなしにする所業なので怒りと悔しさがありました。外部委員会の委員の皆さんにも失礼な話です。
そして二つの課の課長とその上席を控室に呼んで、問いただしました。すると苦しいことに「懇話会のこうこうこういう発言と限ったものではないが、その手の発言があることは伝えている」と。私はそんな幅を持たせた質問の仕方ではなく、委員からの発言の中身「差別を助長しかねない」を聞き出し、それを知事に伝えるとともに補助金の所管課とも共有しているかと聞いたので、私学振興課と人権男女共同参画課のいうことは詭弁です。自民党のようにたくさん時間をもっているわけではなく、割り当てられた短時間で効果的に質問を組んでいるのに、事前にやり取りした中身と真逆の答弁はあまりに失礼と。私が確認した答弁基調も記憶にないという。
「いろいろすれ違いはあったが決して(私を)陥れようというつもりはなかった」と上席はわかってほしいといいましたが、私は陥れるつもりだったのだと確信しています。
私は知事に、あなたがやっていることは差別だと理解してほしいので、その主張は届けましたから、答弁に動揺して質問をゆがめたわけではないのですが、人権を冠する課がこういうことをするのかと思うと本当に情けない思いがしました。今後は丁寧に対応すると両課とも答えましたが、悔しい話です。
知事はよく全庁コロナシフト(コロナ対応に変えている)といいますが、二課が議員を陥れてまで自らを正当化しようとしている、私にもし心の用意がなければ質問が成り立たなかったので、まさに県庁に差別シフトが敷かれていると思うと茫然とします。しかし茫然ともしていられないので、この件にかかわったすべての県職員と、会期が終わってあいさつに回ってきた知事と3人の副知事に私がかつて取材して書いた朝鮮学校の歴史と2015年段階の補助金問題についての記事をコピーして配布しました。知事には私がそこに同席できなかったので君嶋議員経由で大山からラブレターですと。苦笑いしながら受け取ったといいますが。懇話会の委員から歴史を知られていなすぎるとの指摘もありヘイトスピーチの啓発本にも歴史を書いてほしいというリクエストもありました。
知事が学費補助を決めた時、右翼団体がハンドマイクで「黒岩知事は売国奴」と怒鳴っているのを聞きました。拉致問題議員の集会(櫻井よしこ氏も参加)の集会に知事が呼ばれているのも知っています。朝鮮学校を敵視する勢力も県民でしょう。しかし朝鮮学校の生徒たちに誤りながら支援を続ける県民もいるのです。知事は政治的な力に左右されるべきではなくあらゆる人権を尊重する立場に立たなければなりません。
ただ、朝鮮学校問題は、世論の中であまりに隣国バッシングが強いため、共産党支持者の中にも理解されていない部分があります。
県が付けている教科書改訂の条件は、他の外国人学校にそういう条件を付けていない中で朝鮮学校にだけ教育介入している差別ですが、県が本来自主性を尊重すべき授業内容を調べに行った際も教育内容に問題はなく学習指導要領にも準じた中身で、拉致問題は全国段階で行うべき教科書改訂が財政問題で不可能なので、立派な副読本を作成して教えているのです。
日本は慰安婦問題を教科書から消しているのに?(教科書検定制度と右翼の街宣車が教科書会社に圧力となりほとんどの教科書から消えました。)
アメリカンスクールの教科書に原爆投下を書けとか言わないのに?
朝鮮学校問題は国政を変えないとだめだとあきらめず人権を知る知事の下ではきちんと支給されています。そういう議会でも人権を知らない議員による追及があってそれにあらがうにはかなりの精神力が必要とされます。私たちはあきらめません。私は日本とアジアの懸け橋になりたいとさわやかに笑う子どもたちを知っています。