代表質問一問一答 生活保護行政
(2)法の趣旨に則った生活保護行政について
ア.基本理念について
[大山議員]次に、法の趣旨に則った生活保護行政について伺います。
生活保護については、今年2月にわが党の代表質問の中で取り上げました。答弁は比較的前向きなものではありましたが、生活保護に関わる課題が解決されたわけではありません。
残念ながらその約一か月後に、横浜市神奈川区で生活保護申請に来所された方の申請を受け付けず、来所者の意思を尊重した対応が行えなかったという事案が発生しました。所管課が深い反省と謝罪を発表したものです。
コロナ禍により経済的な苦境に追い込まれたり孤立に陥る人が増えており、女性や若年層の自殺の増加も報道されています。生活保護制度に適切につながっていたならと思わずにいられません。
初めに、基本理念について伺います。
コロナ禍で困窮世帯が急増している状況でも生活保護の利用がそれほど伸びていない要因の一つとして、制度的な問題の他に、生活保護制度に対するネガティブなイメージによる申請の躊躇があると懸念されます。
困窮している方々からのご相談の中で、頼りにしていた生活福祉資金の支給が受けられず手持ちのお金が尽きたと言われるので、生活保護の利用を勧めましたが、「それは避けたい」と言われました。育ち盛りの子どもに「あまり食べないで」と言わなければならないのが辛いというお母さんでした。生活保護は避けたい、そういう方に何人も出会いました。
また、最近は有名芸能人がユーチューブ上で生活保護バッシングを行い、批判を集めました。そのあと1週間たたないうちに、厚生労働省は公式ツイッターで「生活保護の申請は国民の権利です」というツイートを公開しました。
厚労省の担当者は、「そういった報道が盛り上がっている中で、社会的に生活保護について周知を行う機会であると考えた」との見解を示しています。
そこで知事に伺います。
生活保護制度は、憲法第25条、生存権を具体化する大切な制度です。コロナ禍に限らず、「苦しい時にはためらわずに利用を」と呼びかけることが重要だと考えますが、見解を伺います
[黒岩知事]次に、法の趣旨に則った生活保護行政についてお尋ねがありました。まず、基本理念についてです。
生活保護制度は、生活に困窮する県民の暮らしを守る最後のセーフティネットです。県では生活保護の相談があった際には、生活困窮の状態やご本人の気持ちをしっかり受け止め、申請を希望する方に対しては丁寧に手続きを説明するよう、福祉事務所を指導しています。
また、コロナ禍の長期化が県民の暮らしに大きな影響を及ぼしていることから、生活に不安を感じる時はためらわずにご相談くださいと、県のホームページに掲載し広く呼びかけるとともに、県内各地の福祉事務所にも参考にしていただくよう周知しています。
イ.生活保護申請権を保障する仕組みについて
[大山議員]次に、生活保護申請権を保障する仕組みについてです。
厚労省から、新型コロナ感染による影響下において、確実かつ速やかに要保護者の最低生活を保障する観点から、生活保護の弾力的な運用を行う旨の事務連絡が、昨年度6回にわたって発出されています。通勤用自動車や自営用の資産の処分指導を留保できること、生命保険に対する処分指導の留保などです。
しかしながら、各地域の福祉事務所のホームページを調査したところ、弾力的な運用を明記しているところが、本県以外ではわずかにとどまっています。申請には、車や持ち家の処分や生命保険の解約が必要と思い込んでいる方々に、弾力的運用をきちんと知らせる必要が あります。
また、横浜市や小田原市は保護の「受給者」という表現を改め、「利用者」という言い方を採用しています。「受給」という言葉は、申請者にとっては「施しを受ける」というニュアンスが感じられるとのことで、各地で改善が図られてきているものです。札幌市では、生活保護申請を促すポスターを作成して啓発も行っています。
そこで知事に伺います。
研修などの機会を通じ、生活保護制度の弾力的な運用についての説明を窓口で徹底すること、生活保護のホームページやしおりに国民の権利であることを明記し、不当に申請を抑制するような表現を排除するよう改善を図ること、そのために県が指導性を発揮するべきと考えますが、見解を伺います。
また、札幌市のようなポスターを作成し、制度の利用を促すべきと考えますが、併せて伺います。
[黒岩知事]次に、生活保護申請権を保障する仕組みについてです。
県はコロナ禍の生活保護の弾力的な運用について、研修や会議、監査等の機会を捉えて繰り返し福祉事務所に周知しており、県民のみなさまに対しても県のホームページでご案内をしています。
また、各福祉事務所が用意する生活保護のしおりやホームページについて、保護の申請をためらうような表現になっていないか指導するとともに、生活保護の相談者に寄り添った対応をするよう求めています。
次に、ポスターについては、県ではすでにホームページで生活に不安を感じる時はためらわずに相談するようご案内しており、作成する予定はありません。
[大山議員]ご答弁いただきました。一点再質問いたします。
生活保護に関して、ポスターは県としては作成しないということでしたけれども、ホームページにも「25条に規定される」という記述はないので、札幌市の作成したポスター、札幌市に聞きましたら20枚程度だと。市庁舎の中、そしてインフラに関わる、例えば水道やガスの事業者の所に貼ってあると。枚数は少なくても、効果が絶大かと考えます。
保護申請のハードルを下げるためには有効だと考えますので、各福祉事務所の会議などでこのポスターの例を紹介していただきたいと思うのですが、そこはいかがでしょうか。
[黒岩知事]それでは、再質問にお答えいたします。
県は、生活保護制度が適正に実施されるよう、福祉事務所の会議などで情報の共有や意見交換を行っています。札幌市が作成したポスターにつきましても、今後各福祉事務所との会議等において紹介してまいります。答弁は以上です。
≪要望≫
[大山議員]どうもありがとうございます。ご紹介いただけるということで・・・。
これまでも各福祉事務所に対してしっかり指導して来られたことは想像に難くないのですけれども、実際、厚労省が弾力的な運用の通知を出しても不適切な事例が散見されているということから、一層の福祉事務所と連携した適正な生活保護行政の推進に力を貸していただきたいと思います。
ウ.扶養照会について
[大山議員]次に、扶養照会についてです。
生活保護申請時に親族に申請者を扶養できないか問い合わせをする扶養照会については、国会でも、有効性が疑わしく申請を阻むものとの問題が指摘され、厚労大臣は「扶養照会は義務ではない」と重ねて答弁しています。さらに、厚労省は本年3月、実務マニュアルである「生活保護手帳別冊問答集」の記載を変更する通知を発出しました。生活保護申請者の意向を尊重する方向性を明らかにし、親族に問い合わせが行くことを拒否したい人は「拒否したい」という意思を示し、一人ひとりの親族について「扶養照会をすることが適切ではない」または「扶養が期待できる状態にない」ことを説明すれば、実質的に照会を止められることになりました。
しかし、支援団体などから、20年前に離婚した妻への照会が行われているなど、依然として不適切な窓口対応が指摘されています。また、県内では、扶養照会の際、扶養義務者と呼ばれる親族の勤務先や負債を含めた資産状況まで問う書式になっている市町村が、依然として多数あります。さらに、国や県が行う監査で扶養照会の有無が問われることから、行わざるを得ない実態があるといいます。
そこで知事に伺います。
扶養照会に関する生活保護手帳別冊問答集の変更内容を改めて各地の窓口に徹底し、扶養照会書類については申請者に心理的負担をかけない形式への変更を求め、国や県の監査項目から扶養能力調査を削除することを国に求めるべきと考えますが、見解を伺います。
[黒岩知事]次に、扶養照会についてです。
生活保護制度では、生活保護を受けるためには、他の親族から支援を受けることができないかを予め確認する、いわゆる扶養照会を行うことになっています。
国はこれまでも柔軟な取扱いを示しており、10年程度交流がない親族には扶養照会を行わないことなどを示しています。県はこうした取り扱いを、あらゆる機会を通じて全ての福祉事務所へ徹底していきます。
次に、扶養照会を受ける親族は資産の状況を記載した様式の提出を求められますが、簡略化した様式を使用している福祉事務所もありますので、これを他の事務所に紹介していきます。
また、監査項目から扶養能力調査を削除することについては、生活保護の適正な実施の観点から、県として国に求めることは考えていません。
※生活保護に関しては本当に国がかなり弾力的な対応を求めていますが、窓口ではいくつもの不適切な対応を見聞きしています。県も福祉事務所の会議で徹底するというので、ポスターの普及をふくめ窓口の不適切対応をなくすために各地で追求が必要だと考えます。