大山奈々子
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歴史の歪曲を許さない 水面下の闘い

ブログコメント2

今回の投稿はぜひともお読みいただけたらと思います。

今回の文教常任委員会には執念を感じさせる陳情が出ました。陳情第83号「歴史教科書についての教師用補足説明資料についての陳情」(教育を良くする神奈川県民の会)

1 陳情の要旨
(1)政府が令和3年4月27日に閣議決定した従軍慰安婦や強制連行等についての答弁書の内容についての教師用補足説明資料の作成を図って戴いただきたい。
(2)市町村教育委員会に対しても指導・助言・援助をして戴きたい。

2 陳情の理由
政府が令和3年4月27日に閣議決定した答弁書では、政府が調査した公文書等の資料に「従軍慰安婦」という用語はないこと、また、「(従軍)慰安婦」が軍により「強制連行」されたとい
う虚偽の言説が、新聞報道などにより流布された経緯を踏まえ、「従軍慰安婦」という用語を用いることは誤解を招く恐れがあり不適切であるとしています。(後略)

・・・・・・・・・

教科書のみならず教師用の説明資料にまで歴史修正主義が持ち込まれようとしています。

神奈川県議会は陳情や請願の中身に関し、開かれた場所で議員が

採決態度の理由を述べる習慣がありません。休憩中に関係課と議員だけの(傍聴者も退出を求め、中継もない)勉強会と称する場で、中身についての検討があります。この問題は教育局にも委員の皆さんにもしっかり訴えたい中身なので、私も周到に準備しました。ご紹介するにあたって私のこれまでの経験をお伝えします。

①相模湖ダムで中国人朝鮮人の強制労働で亡くなった83名の方々の慰霊祭が毎年地元の皆さんのご努力で行われており、県議団も参加させていただいていました。

②過去に県職員の方から「国際課にいた時代、当時の長洲知事から県内の中国人朝鮮人のリストが渡され一人ひとり訪ねてどのような人生を送ってこられたか聞き取ってきなさいと言われた。どうしたら発展途上国を支援できるか自治体ができることはないか研究する会議も持たれていた」と聞いたことがあります。

③週刊しんぶん新かながわに所蔵されていたこの国際課が作成した資料を何かの役にたつかも、とお借りしていました。

 当日のやり取りは短時間で行うことが求められるので、効率を上げるため事前に確認するべきことを当局に送っておきました。

当日の勉強会では担当課が陳情の文書を読み上げてから基本的な姿勢として「教科書の中身の訂正は発行者が行うこととなっていて…そのような資料を作成することは難しい」という回答でした。

私は事前の質問を問い、回答をもらいました。

●4月の閣議決定は、何らかの学問的裏付けのある決定かどうか確認したい。→そこの確認はできていないが公文書に記述がないことを理由とされている

●慰安婦に関し軍の関与については、1993年の河野官房長官談話で「いわゆる従軍慰安婦」と表現され、軍の関与と強制性が認められているが間違いはないか。→肯定する回答

●1994年、本県渉外部国際化班発行「神奈川と朝鮮の関係史調査報告書」には、県下の朝鮮人強制連行について「朝鮮人個々人がすべて暴力や身体の拘束によって連行されたかどうかということではなく、抵抗すれば強制連行される体制の下で行われた朝鮮人戦時労務動員をさす」と定義し、1944年9月には朝鮮にも「国民徴用令」を適用し、朝鮮人強制連行が行われた、と記されている。
鶴見の軍需工場や真鶴港の改修工事、相模ダム建設他数々の例が挙げられている。が確認したい。→これは問う形ではなく、こちらで資料を手に説明した。

●教科書検定基準に関しては2014年、「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それに基づいた記述がされていること」という「政府見解条項」を決定していますが、これも、文科省自身が「(政府見解と)異なる考え方を記述してはいけないということまで求めてはいない」(13年11月20日の検定審議会での教科書課員の説明)としています。間違いはないか。→これも時間短縮のためにこちらで説明

うちの議会は議員の半数が日本会議派だといわれています。文教常任委員会には自民党議員7人、立民4人、公明1人そして私という構成です。陳情に関する勉強会では私と自民の議員3人のみの発言となりました。

●自民議員「台湾では日本との温かい交流も知られている。そういう事実もある。閣議決定を受けて教科書会社が記述を変えてきている。そういう事実も伝えてほしい

●担当課「伝えます」

●私「教科書会社が変えたことを伝える前に、文科省から教科書会社に対して異例の働きかけがあったことも伝えてください。」

●担当課…

●自民議員「働きかけっていうか、閣議決定があったことを伝えただけだよね」

●私「つたえただけかもしれませんが…」

●自民議員「文科省が圧力かけたっていいたいんでしょ」

●私「言いたいですね。」ともかくこれはあきらかな歴史修正主義ですからね。対応が難しいではなく、そんな介入を許すべきではありません。

とここまでやり取りして、議事録に残る採決の時間を迎えました。採決態度だけではなく、以下の意見を加えて不了承としました。

◆◆本陳情に言及されている4月の閣議決定は学問的裏付けのない「見解」により歴史用語を規定したものです。公文書に記述がないとされていますが、最高裁の判例には軍隊慰安婦や強制連行の文言があります。何より1995年、本県の渉外部国際課地域国際化班作成の「神奈川と朝鮮の関係史調査報告書」に相模ダムをはじめ、強制連行の事実が何か所も報告されています。

史実をまげて教育内容への反映を図ることは「官僚や一部の政党、その他の不当な外部的干渉を禁じる(1947年衆院教育基本法案委員会)」教育基本法にも抵触します。政治と教育の距離は厳にわきまえなければなりません。本陳情は教育への政治介入に他ならないと考えますので不了承といたします。

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準備段階で、相模湖畔に長洲知事名の湖碑があったことを思い出し、強制連行の文字がなかったかと検索するとその中に県の調査報告書の言及があり、そういえばその資料があったと思い出し、書棚を探して該当する部分を見つけたときは本当にほっとしました。

ほかのすべての委員が継続審査を主張しましたので、委員会の審査結果としては継続審査となりました。了承されなくて本当に良かったと思っています。   

過去の本県国際化班の誠実な仕事の成果と、歴史を語り継ぐ住民の粘りと、日本の負の歴史を直視すべしという私の執念が混然となったやりとりで歴史修正に歯止めをかける一助となったと思います。


コメント

  1. 石井洋二より

    貴重な資料調査に裏付けられたリアルなご報告ありがとうございます。大山議員の孤軍奮闘の姿がにじみ出ています。

    • 大山奈々子より

      ありがとうございます、歴史を正しく伝えようとした先人の努力の貴重さがわかりました。

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