津久井やまゆり園視察
2016年7月の事件から5年の月日が経ちました。月命日にあたる11月26日に私たち県議団で建て替えが終わった津久井やまゆり園を訪れました。(当時厚生委員で事件後の対応と障がい者施設の在り方を論議してきた君嶋議員は代表質問直前で参加かなわず魂の参加となりました。)
門を入って正面に慰霊の碑が配され、繊細で美しいやまゆりの花が刻まれていました。亡くなった方の人数とは違う本数。お名前が刻まれている方もそうでない方も…ご遺族の複雑な思いを感じます。月命日には大きな水鉢に水が満たされるのだといいます。19本の溝から水が滴っています。ご冥福をお祈りし、こんな事件が起こるような社会を変えていく決意をもって手を合わせました。
居室がすべて個室となり、広々とした交流の空間も確保され、地域移行に向けて試行的に過ごす部屋や家族とともに過ごす部屋も整備されていました。
夜間の人員体制も強化するため、そして小規模体制になったことで従前の指定管理料を2倍にしたというところに県の真剣さは感じました。県内の他の障がい者入所施設も人員体制が強化されました。
ただ課題は、視察後の懇談の中にもありましたが、ここは通過型の施設ですから、と当局が断言されたこと。同行した赤旗記者からもその真意が問い返されました。「もちろん、ここにいたいという方を追い出すというものではありません。」
この間、県当局によって丁寧に意思決定支援がなされ、津久井やまゆり園事件のあと、それぞれの方の身の置き方について、ご本人の意向が確認されてきた経緯はあります。ご家族ではなくご本人の。しかし知的障がいのある方の意志がどこまで純然たる本人の、と言えるのか、ご家族の意志をどこまで反映されるのか…悩ましい問題です。県ややまゆり園の指定管理者である共同会が丁寧に対応されてきた結果、地域で生活を始めた方や横浜の芹が谷やまゆり園とこちらにそれぞれ入所と、行く先が決定しました。
障がい福祉施設は大規模から小規模へ、一点集約型から地域移行へという流れはありますが、地域で例えばグループホームで暮らす体制が不十分な中で地域移行ありきでことを進めていいのか、帰りの車の中でも私たちは話し合いました。多くの障がい者団体の皆さんがこの事件にどれほどの衝撃を受けられたかは懇談を通じて痛感してきました。親なき後に障がいのある方が安心して暮らせる社会にしていくことは本当に私たちすべてに問われている責任だと感じました。
その後まもなく知事が「当事者目線の障害福祉宣言」を発出しました。その中にはやまゆり園を地域移行の用意をする場と断言しており、ここに残る可能性を排除したこの言い方は問題だと感じました。厚生常任委員会でも雑なこの宣言にむけて批判が噴出したようです。不適切な発信は不適切な認識に基づきます。県立の施設で起こった悲劇から学ぶべきことをしっかり議会で求めて生きたいと思います。
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