チェック機能を果たせない神奈川県議会 3つの審査結果
県議会がなんでも賛成議会であることはお伝えしてきましたが、今定例会は、我慢ならない案件が3つありました。県民の皆さんに広く知っていただきたいと思います。
●「葉山港の指定管理者の指定」という議案が建設企業常任委員会に諮られました。
建設企業常任委員の共産党、井坂議員の質疑はこの問題を追及してきた無所属の横須賀市議の方や、受け入れることになる葉山の町議などからも注目されたものでした。
静かな佐島漁港が、一企業によって違法に、大型のクルーズ船が出入りする港に変貌させられた話です。横須賀市民オンブズマンのHPでは海の私物化に対し市や県の不作為が厳しく批判されています。
井坂議員の動画を撮った言葉です「横須賀の佐島漁港の芦名地区というところで行政違反を繰り返して過怠金という、罰則を科せられた業者がこの指定管理の候補者として議案として出てきました。行政罰として過怠金、過料を払っているというのは非常に重い行政処分だと思います。しかもそれを昨年払っているということからすると、この事業者を指定管理者の候補として県の代わりに港を管理してもらうのはやっぱりおかしいということで質疑を交わしました。7日の日に議決が問われます」ということで迎えた7日は、やはり共産党以外の会派が全員賛成でした。今後は法令順守をなどと言いながら、巨悪を見逃している議会です。
委員会審査のち、議案は本会議に諮られます。10月14日、採決が行われました。
井坂議員の反対討論をぜひお読みください。長いですが、大問題がわかります。泣けてくるような話です。
最後に、定県第84号議案葉山港の指定管理者の指定についてです。
今回、候補者となっている湘南サニーサイドマリーナはこれまで横須賀市の佐島漁港芦名地区において条例違反を繰り返し、行政指導を受け、昨年行政罰である過料の一つである過怠金まで課せられた事業者です。
小さい港ではありますが、その港の中で3か所の水域を無許可で占有する違反をしていました。無許可で約140本もの杭を打ち、浮桟橋をつくったため、市から原状回復の文書指示などが出されるとともに3件の過怠金を課せられています。ちなみに横須賀市の管理する港においてこれ以前に調査できる範囲では過怠金を払うケースはなかったとのこと。また県の管理する港においても過去5年で過怠金を課せられたケースはないとのことで、このようなケースはまれなことです。私は、それだけ悪質だったからこそ過怠金を課せられているのだと思います。
また、この地区で起こっている一連の問題に実質的な事業主体として湘南サニーサイドマリーナが係わっています。県の天然記念物の岩礁を無許可で破砕したことについては、県教育委員会は市教育委員会と事業者に対して厳重注意をするとともに、3年間の水質調査などの条件を付しています。
さらに、漁礁兼消波提の延長工事を無許可で行い市の防波堤に連結したり、国も県も補助金を入れて整備した5号防波堤、4号防波堤の消波ブロックを無断で移動していたりと違反を繰り返し、市から原状回復の行政指導を受けました。しかし、5号防波堤については、最終的には原状回復をしないまま、防波堤そのものを横須賀市が事業者に売却するというこれまでに聞いたことのない対応を行っており、横須賀市の対応の甘さが浮き彫りになっています。
また、許可もなく違法に岸壁をかさ上げしていたことが2件明らかになっており、公有水面埋め立て法違反の疑いがありました。県は法違反について市から見解を求められ、上部の土地を利用しなければ法違反ではないという見解を出しました。そのことから最終的には、新たにできた土地を使用しないことを条件に法違反ではないとされています。しかし、住民からの通報があるまでは、この土地を利用していたことが明らかであり、原状回復させるべきところを後から許可をするという行政の甘い対応がここでもありました。
この件に対しても護岸補強工作物の占有申請をしていなかったことにより過怠金が科せられています。
これらの一連の問題は、過去3年の間に行われたことであり、行政指導や処分が繰り返し行われてきました。横須賀市からも、事業者に対して文書で、漁業環境の保全について「漁港管理に係る倫理の保持と法令等の遵守を強く要請」している状況です。
しかし、外部評価委員会の評価点数を見ると「コンプライアンス、社会貢献」の項目は5点満点中4点。「事故・不祥事への対応、個人情報保護」の項目は5点満点中4点となっており、選考理由のコメントでは、管理運営方針について、「漁業者のことも含め、海のことを真摯に考えており、評価できる。」となっています。
この評価は正当な評価でしょうか。佐島漁港芦名地区は、静かな漁港だったものが、大型のクルーザーが何隻も停泊する一大マリーナへと変貌し、到底漁港といえる状況ではなくなっています。また、横須賀市が文書で要請した内容とも外部評価員会の評価はかけ離れているといわなければなりません。このような認識の違いを生んだのは県の責任です。
当然これだけの条例違反を繰り返した事業者は「コンプライアンス、社会貢献」「事故・不祥事への対応、個人情報保護」の項目に係って、不適格とされるべきですが、県土整備局の答弁では、これらの条例違反は「重大な事故や不祥事にあたらない」との見解が示され、これらの条例違反や過怠金を課せられている内容について外部評価委員に伝えていないとのことです。これでは正当な評価ができるわけがありません。
また、私の質問に対する答弁の中では、県の条例に違反して過怠金を課せられた事業者であっても「重大な事故や不祥事に当たらない」として指定管理者の選定の際に、外部評価委員には伝えないとの意思が示されました。さらに、これに関する陳情に対する答弁の中では、過怠金は社会的に大きな影響を及ぼすものではないと答弁しています。このような見解や答弁は、過怠金という行政による罰則をあまりにも矮小化するとともに、県民に対し、法令遵守の意識を低下させるものといわなければなりません。このことは、著しく公正性を欠くもので、多くの県民の理解を得られるとは到底思えません。
知事は、11日の記者会見で、指定管理者の選定に係る運用について今後検討していきたいと答弁されていますが、今回のことにどう対応するかが大切で、今後にとっても大きな影響を及ぼすと思います。
さらに、この議案に関連し、葉山町議会では11日の本会議で、県知事に対して「葉山港の適正な港湾運営を確認する意見書」が全会一致で可決されています。また、葉山港の利用者団体からは指定管理者の選定に問題があるため指定管理者の再考を求める意見が出ています。
議案となっている事業者がこれまで近隣の漁港で行ってきたことを知っているからこそ不安が増大しているものであり、このような地元の議会や利用者の意見を尊重するべきと考えます。
指定管理者はだれが決めるのでしょうか。議決事項である以上、最終的には議会が決めることになります。
私たちは、今回の議案は議会としての行政のチェック機能の役割が強く求められているものと思います。ぜひ県会議員のみなさんにはこの議案に反対していただくよう求めるものです。
以上のような観点から、県の指定管理者の選定に到底賛成できませんので、定県第84号議案葉山港の指定管理者の指定について反対いたします。また、この議案に関連し債務負担行為の設定をする定県第71号議案令和4年度神奈川県一般会計補正予算第2号にも反対いたします。
以上で討論といたします。
この反対討論のあと諸会派から賛成討論が行われてこの議案も他の議案同様共産党以外の賛成で可決されました。
井坂さんは普段は温厚ですが、(いやこの日も温厚でしたが)反対討論でほかの議員に対し「ぜひ反対していただくよう求めるものです。」この表現を用いたところに強い義憤を感じました。