TSMC誘致の光 震災復興 視察1日目
本編です。神奈川県の企業誘致策はそもそも助成金の効果検証が不可能な施策なので懐疑的に見ています。国策もあって誘致した熊本県菊陽町のTSMC誘致の影響を伺いました。
■企業誘致のご担当に話を聞きました。熊本は三菱電機熊本工場の進出以来、シリコンアイランド九州をけん引する存在。産業振興施策として半導体分野を戦略的に位置づけ、国の施策とも連動した県独自の戦略的誘致を行ってきた。良質で豊富な水資源や多くの理工系人材の輩出(県内の大学や高専など理工系人材に強い)などの強みが要因。日本有数の半導体製造拠点(半導体関連の資材調達、技術共有など産業インフラが有効活用でき、県内協力企業群は200社にのぼる。)
台湾・半導体製造最大手TSMC子会社JASMの進出は2021年に第一工場、2024年に第二工場。それぞれ稼働開始は2024年12月と2027年末。私たちが熊本にいるときに第三工場の計画が報道されました。設備投資額は2兆9600億円超
200億米ドル超。雇用予定者数3400人以上。月間生産能力は10万枚以上(12インチウエハー換算)←こういう単位で数えるとは初めて知りました。
後で調べましたが国からは半導体支援を「経済安全保障」の国家戦略と位置づけて1兆2千億円(国民一人当たり換算1万円)の補助金、熊本県からも数十億円の関連した補助金が出ているようです。

熊本県内への波及効果は電子デバイス関連産業集積に伴う県内への経済波及効果は10年間で11兆①920億円
うちGRP(gross regional product県内総生産) 影響額は5兆6182億円、九州地域(九州・沖縄・山口)における半導体関連設備投資による経済波及効果は23兆300億円。地域企業への参入がうまくいった場合…
波及効果①阿蘇くまもと空港への国際便の増便 (高雄線に加えて台北、香港、上海、ソウル、釜山5路線 週41便) 旅客者数は2023年から2024年で倍増
波及効果②民間企業や教育機関にお手も連携強化の動きが加速。(例:アジア最大級の半導体展示会であるセミコン台湾2025の開催に合わせ県内の大学生が台湾を訪問、展示会の見学や企業訪問、台湾の大学生との交流を実施)
【課題】TSMC進出に伴い発生する重要課題に関し部局横断的な推進本部を設置 半導体産業集積強化推進本部のもとに 地下水保全推進本部、渋滞解消推進本部、外国人材との共生推進本部、「くまもとで働こう」推進本部を設置
地下水に関しては、地下水保全の指針があり地下水の減少はないか モニタリングの井戸を掘ってリアルタイムで見られるような仕組みを作っている。 使った分は地下水の涵養 ほぼ100%リサイクルできている
渋滞解消は新たな多車線化など6路線の道路整備や、短期施策として車から公共交通への転換を促す取り組みが行われています。
人材育成では、熊本県立大学に令和9年に日本初の半導体学部(仮称)が開設、その他2024年と2025年には大学や大学院、高専、技術短期大学、専門学校、高校に半導体関連の学科や課程が開設され、小中学校でも出前授業や動画等による半導体の魅力発信を行う、民間企業でも半導体要員研修施設やテクノセンターが開設するなど
熊本県内に12か所の工業団地が整備され、八代には県立のものも。サイエンスパークも。というわけでバラ色な感じの話を聞きました。
このブログを書く中でやはり経済産業省の年間予算が1兆円の中で1兆2千億円を投入することの是非が論じられているのも見ましたし、東洋経済のフリージャーナリスト杉本うりこ氏の記事によると台湾のハイテクジャーナリスト、林宏文氏の言葉が紹介されています。「日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。」と。トヨタとアップルを指すそうですが、補助金が得られたからではないと明言されてしまっているとは…
やはりそもそも企業誘致は助成金があったから来たんだという明確な因果関係が示せない施策。妥当性をどう検証していくか。
■震災からの復旧について交通政策課さんに聞きました。2016年平成28年の熊本地震によって南阿蘇鉄道は全線で被害が多発しました。同年6月には大雨による二次被害も発生。神奈川県内でも箱根登山鉄道が豪雨災害で崩落、なかなか復旧できなかったことがありました。復興について学びました。
被害は、トンネル内のクラック多発、レールがうねる、地盤沈下でレールが浮き上がる土砂流入でレールが移動してしまう。ケーブルの断絶、大きな落石、橋脚の破断、変形…大変な状況でした。南阿蘇鉄道の復旧に当たっては地域公共交通として将来にわたり復興後の南阿蘇地域の地方創生に資するものとなるよう取り組んだ、福島のJR只見線の復興の事例など参考にしながらの取り組みだったと言います。
復旧工事費用については65億~70億と見込まれたが、東日本大震災の時には特例だった事業スキームが恒久的な制度となった。特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業により、実質国の支援97.5%となった
南阿蘇村や高森町の首長がなんとしてもと、県や国に働きかけた。熊本県副知事を会長に「南阿蘇鉄道再生協議会」を設立し国に上下分離方式※の導入を決定。新法人での運営体制に関し国に働きかけ新制度での国の支援が決定。鉄道事業再構築実施計画の認定を受けたことで国庫補助率が最大1/3→1/2へとかさ上げされました。着工後5年で全線開通が果たせました。簡単な上下分離のイメージは下のようです。

最近ではJR豊肥本線との接続も強化され、空港から阿蘇への周遊性が高まったそうです。この課からのヒアリングで感動したのは「鉄道は残さなければならないという思想で取り組んでいる。公が力を入れなければバスも、公共交通を守っていけない。地域自体が存続できない」という言葉が聞かれたこと、神奈川県も某局で、この課の理念はと聞いて特にそのようなものはないといわれましたね。なかなか理念とか思想とかいう言葉を聞く機会がありません。行政からの強い責任感や使命感を聞くことの心強さよ。
(豊肥本線もTSMC誘致後は東京の地下鉄並みの混雑もあると話しておられました。)
■県庁でお話を伺った後は、レンタカーで、TSMCの建設中の第二工場の広大な敷地の周りを走り、退勤時間でしたので渋滞ぶりを体感しました。
そしてTSMC誘致の影の部分については次回。






コメント
『1兆2千億円(国民一人当たり換算1万円)の補助金、熊本県からも数十億円の関連した補助金』には、あらためてたまげてしまいます。
その使途の明細についてはわかりますか?
設備投資などに対してだと推察されますが、明細は持っていません。熊本県に概略聞きますか?国にも聞かないといけませんね
使途が明確になれば、より説得力のある批判となり、『「選択と集中」に重きを置く 政府の今の経済方向』を修正していこうとする世論形成に繋がっていくものと思います。
確かに。それはそれとして一方で出さなくても来てくれる企業に助成金の支出を決めることの問題は企業誘致に付きまとうと思います。