KAST視察。産業技術センターとの独法化は…
神奈川科学技術アカデミーを見に行きました。HPはこちら。
このたび海老名にある神奈川県立産業技術センターを独立行政法人化して、この川崎のKAP(かながわサイエンスパーク)にあるKASTと両者を合併しようという議案が出されています。
私たちは以前視察させていただいた産業技術センターは、中小企業が自社では行えない実験などを安価に行うことができる貴重な施設だという認識を持ちました。独法化についてセンター側から説明を受けたときに、いろいろな決定を議会を通じなくてもいいからスピーディにできるというメリットは説明されましたが、想定されるデメリットを問うても答えがなかったこと自体に大きな不安を持ちました。どうしても採算性を上げていくことが求められることから、県民への私たちはこの議案には反対の立場です。
合併のもう一方のKASTについても見ておかねばということで見に来ました。
産業技術センターに長くいたという理事長さんに丁寧に説明していただきました。
{設立目的}
先端的な科学技術分野、中小企業のための工業技術分野等における研究の推進、研究成果の育成、
技術移転、人材の育成、学術文化の振興、試験計測等を産学公の連携のもとに行い、神奈川県にお
ける科学技術の振興と産業技術基盤の強化を図り、もって産業の発展及び生活の質的向上に寄与す
ることを目的として設立。
大学の研究を支援して産業化するという意味ではそれなりの成果が表れているものの、県内企業の支援になっているのかというと確たる数字がないといわざるを得ません。200億の投資が県内産業を活気づかせたのかどうか。国の事業であるなら広域の大学、企業支援につなぐというのであればわかるけれど、神奈川県の税金ですすめることかという疑問は残りました。
ここの研究成果の大きなひとつが酸化チタン光触媒。
酸化チタンは脱臭性があり、私が嗅いでいるのは、一方の口からいれた焼き肉のたれが光の管の中をとおって無臭化されることを確認するためです。
6年前に設置されたこのテントは左側に酸化チタンが塗ってあり、防汚性をもつということで今も白さを保っています。
酸化チタンには撥水性もあり、それが四角く塗布されたガラスはこのように霧を吹きかけても見事にはじいているのがわかります。
靴の脱臭ポールに加工されたり、撥水ガラスが建材として大きな施設に取り付けられたりと産業化されています。この開発にあたった研究室の藤嶋先生はノーベル賞の候補にもなっているといいます。有意義な研究がおこなわれているのは確かなんですが、ここが産業技術センターと統合することはこれまた内発的なニーズではなく、県からの提案でした。
最後に12月3日に行われた君嶋さんの代表質問の当該部分を引用します。
→ KASTは25年間にわたって、200億円以上の県税が投入されてきましたが、このことについて、しっかりとした評価がなされているとはいえません。
産業技術センターが、基礎研究から実用化までのプログラムを担わされ、イノベーション創出の加速を迫られるのであれば、現実的な技術支援がおろそかになる危険性は十分あります。何より企業から発信される要請に応えながら産業を発展させるという点で、KASTとは方向性や手法が全く逆です。
リスクを抱える新規事業に偏重することなく、現実に存在し、地域経済を支えている企業の要請に的確に応えることこそ自治体に求められています。
産業技術センターは、他の府県等に比べて箇所数も人員も不十分です。体制強化が求められます。
産業技術センターが、県の組織として機能することの重要性は、次の点からも強調したいと思います。
マンションデータ偽装問題など通じて、国や自治体から技術力が失われていることの弊害が指摘されています。指定管理や外部委託が大量に行われていることの結果です。
農林業・建築・土木・製造等々の技術力を手放さず、様々な分野において技術力に基づく安心とサービスを県民に提供することは、県の機能を果たすために必須です。
そこで、産業技術センターは、KASTと統合させることなく、県の機関として体制強化することが必要と考えますが、知事の見解を伺います。
知事はもちろん、
黒岩知事:次に産業技術センターのあり方についてです。産業技術センターを県の機関として体制強化をはかるべきとのご意見ですが、神奈川科学技術アカデミーと統合して、地方独立行政法人に移行することにより、研究開発や技術支援等の機能を強化し、企業の製品開発等を促進していくことができると考えています。また、議員からは、県自身が技術やノウハウ等を蓄積して、安心とサービスを県民に提供すべきとの話がありました。産業技術センターは高度な機器を駆使して、製品の試験や評価を行い、中小企業の製品開発を支援しており、こうした技術やノウハウは新法人に引き継がれます。さらに二つの機関を統合し、研究開発から事業化まで一貫した支援体制を整備することにより、製品開発に対する支援を、よりスピーディできめ細かく行うことができるようになります。このように、技術支援等の機能を強化し、神奈川から新たな製品を続々と送りだしてまいります。
うーん、産学官連携の名で県内企業支援が手薄になる匂いがします。
またも県の役割を考えさせられます。
コメント
このブログのコメント欄に記載すべき内容ではないかもしれませんが関連事項(県の役割とはなんぞやという見地)としてコメントさせて頂きます。
12月23日(水:祝日)付の東京新聞横浜版によると「県動物保護センター」建設寄付事業で、動画151万円、広報紙に1234万円かけて集まったのは約1800万円。実入り400万円だとの報道。建設費約11億円を本年度から3年間で寄付にて集めるのが目標だといいます。目標達成も不明な状況でしょうが目下の費用対効果に疑問と報じておりました。前回の「イクボス事業」もそうでしたが県民の納得のいく費用配分(お金の使い方)を望みます。
鈴木さん
うーむ。いろんな施策、広報費は使っても効果が…ということがありますね。
神奈川県は保護センターで殺処分ゼロだということは達成できました。これはいいことです。動物愛護家の方々の努力で達成できたものですが、ただ依然として保護犬が多すぎるなどいろいろ課題があるようですね。
「ドイツ・殺処分ゼロの理由」によると日本で2012年度、全国の自治体に捨てられた犬猫の数は22万2883匹。うち殺処分されたのが17万2360匹。殺処分率は77.33%にのぼります。そして、新たな飼い主に引き取られていった犬猫は3万3096匹。とされています。
センター建設と同時に啓発活動も不可欠ですね。基金をあつめあるためには広報も必要ですが、今後につながって欲しいと思います。