終戦記念日に。
8月15日、終戦記念日なのに、戦争と平和に思いを馳せる8月なのに、すっかりそういう報道が姿を消したというのは私の思い過ごしではなさそうです。旅行の話を書こうと思いましたが、8月15日という日に平和の事を書かないわけにはいきません。
11日から旅をしましたが、その間、中勘助の『銀の匙』を読んでいました。灘中学?高校?で一年かけてこの小説を国語の時間に教える名物教師がいると聞き、どんな小説かずっと関心がありました。まだ読み終えていませんが、非常に繊細な少年期の心の襞を淡々と描いた作品です。当時とがめられることのなかった差別表現もあり、もう一世紀近く前の、私にとっても古典と言っていいような遊びの種類や物品や言葉遣いがちりばめられている、文化史的価値の高い小説です。
中に日清戦争が始まったころの学校の一幕がありました。「日本人には大和魂がある」といってシナ人のことをなんのかのと口ぎたなくののしった」教師に対して少年がモノ申すシーンです。
「先生、日本人に大和魂があればシナ人にはシナ魂があるでしょう。日本に加藤清正や北条時宗がいればシナにだって関羽や張飛がいるじゃりませんか。それに先生はいつかも謙信が信玄に塩を贈った話をして敵を憐れむのが武士道だなんて教えておきながらなんだってそんなにシナ人の悪口ばかしいうんです」
このもはや正義感とも言えないくらいの至極まっとうな少年の疑問が、なぜ1世紀を越えてなお解決されないのか。隣人愛が支配層の好戦性の餌食にされ、近親憎悪がふりまかれているのか。徴用工問題、表現の不自由展問題に見る、歴史を省みない為政者たちの人権侵害発言が許容されているのか。
本日午後の団会議に間に合わせるべく金沢で旅を続ける家族と別れ、横浜へ。団会議で、君嶋県議の韓国歴史の旅や上野県議の原水禁報告と聴き、団としても平和への思いを深めました。